2月(第75回)
概要
岩手朝日テレビの第75回番組審議会が平成16年2月26日(木)、盛岡市盛岡駅西通の岩手朝日テレビ会議室で開かれた。
合評番組は「人間ビジョンスペシャル 心の中の国境」。
- スタルヒンの数奇な運命が分かりやすく描かれていた。古い資料やフィルムを活用した番組構成も良かった。
- 徳光アナウンサー、佐々木主浩選手の起用も的を射ていた。
- プロ野球発足70年という年にこういった番組を制作した意義が感じられる。
- スタルヒンを知る世代にも知らない世代にも、興味深く見ることが出来た。
- スタルヒンの死には謎が多いが、その辺りをもっと追求して欲しかった。
- 番組後半にロシア紀行を盛り込み、難民問題にも言及していたが、スタルヒンの生涯だけで構成しても良かったのではないか。
という意見が出た。
出席委員は、増子 義孝委員長、笠川 さゆり委員、小川口 柳太郎委員、石井 三郎委員、大坊 忠委員、高橋 真裕委員、松本 直子委員、宮野 裕子委員、村田 久委員の9名、欠席委員は、松尾 正弘委員の1名。
議事録
1.開催日時 平成 16年 2月 26日(木)午前11時~
2.開催場所 岩手朝日テレビ本社 3階会議室
3.委員の出席
委員総数 10名
出席委員数 9名
委員長 増子 義孝
委員 石井 三郎
委員 小川口 柳太郎
委員 笠川 さゆり
委員 大坊 忠
委員 高橋 真裕
委員 松本 直子
委員 宮野 裕子
委員 村田 久
欠席委員数 1名
委員 松尾 正弘
会社側出席者名
代表取締役社長 川崎 道生
常務取締役総務局長 伊東 正義
技術局長 佐々木 正樹
番組審議会事務局長 辻 一成
4.議題
(1)3月の単発番組について
(2)番組合評
「人間ビジョンスペシャル 心の中の国境」
平成16年2月15日(日)放送分について
(3)次回の審議会
開 催 日:平成16年3月25日(木)
合評課題:「一関一高 春の選抜出場特番(仮)」
平成16年3月20日(日)放送
(4)その他
5.概要
○ スタルヒンの数奇な運命が分かりやすく描かれていた。古い資料やフィルムを活用した番組構成も良かった。
○ 徳光アナウンサー、佐々木主浩選手の起用も的を射ていた。
○ プロ野球発足70年という年にこういった番組を制作した意義が感じられる。
○ スタルヒンを知る世代にも知らない世代にも、興味深く見ることが出来た。
○ スタルヒンの死には謎が多いが、その辺りをもっと追求して欲しかった。
○ 番組後半にロシア紀行を盛り込み、難民問題にも言及していたが、スタルヒンの生涯だけで構成しても良かったのではないか。
6.議事の内容
辻事務局長
第75回放送番組審議会を始めます。 増子委員長、進行をお願いします。
増子委員長
おはようございます。それでは川崎社長、ひと言お願いします。
川崎社長
おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
本日はデジタル化についてお話させて頂きます。東阪名地区が2003年12月にデジタル化がスタートし、それ以外の地域は2006年中にデジタル放送を始めます。そして現在のアナログ放送は2011年7月24日に停波します。その間、アナログとデジタル両波の放送体制、いわゆるサイマル放送をしなくてはなりません。弊社としましては、経費と収入の兼ね合いからも、サイマル放送はなるべく短期間に致したいと思っております。しかし、このサイマル放送導入時期については各社・各県で温度差があり、引き続き関係各所と交渉して参ります。
またデジタル放送には新たな放送設備や中継車が必要となり、多額の設備投資が必要となります。加えて県内あまねく電波を送るための中継局も新たに建設する必要があります。岩手県は、北海道に次いで山地が多い地形なので、大規模中継局を数多く必要とします。国からは、2011年には県内100%視聴が出来る体制をと要望されております。岩手県内民放4局では共同で建設しようという話し合いを進めております。これについては公的資金の要請を国に申し入れております。
デジタル化に関しては、今後、クリアすべき問題がハード、ソフト両面にございますが、こういった状況でデジタル化に向けた作業を進めております。また局面が変わりましたら、随時先生方にご報告させて頂きます。
それでは本日もよろしくお願いいたします。
増子委員長
ありがとうございました。それでは番組編成についてお願いします。
辻事務局長
3月の単発についてご説明いたします。
3月1日、3日、5日の22:33から「アテネ五輪サッカーアジア地区最終予選UAEラウンド」を放送いたします。時差の関係で遅めの時間帯になっております。
3月6日(土)「明日のブドリたち」。環境問題を取り上げた県の生活環境企画室が提供の番組です。
また、東北6県系列局が共同ソフト開発を目的とした「P6」企画の番組も編成されます。まずは3月15日秋田朝日放送制作の「漬け物紀行」、20日青森朝日放送制作「太陽を追いかけて」、27日福島放送制作「四季彩尾瀬~いのち輝く湿原~」、同じく27日弊社制作「チェアスキーヤーの挑戦!安比からイタリアへ」。2006年イタリア・トリノで開催のパラリンピックを目指す、横澤高徳さんを追ったドキュメンタリーです。是非、ご覧下さい。
3月20日「技能五輪2004in銀河系いわて(仮)」。本年度は新潟、平成16年度は岩手で同大会が開催されます。その事前番組です。また同日15時から「一関一高 春のセンバツ出場特番(仮)」。21世紀枠で出場が決まった一関一高野球部の特番です。高校野球に関する素材を弊局は多く持っておりますので、それを活かした番組で、次回の合評番組でもございますので、よろしくお願いします。
2月の岩手地区視聴率についてはお手元の資料をご覧下さい。一言申しますと、ニュースステーションは、系列全体を見ますと西高東低の傾向がございます。寒くなりますとどうしても仙台から北海道まで、ニュースステーションは苦戦を強いられる状況です。ニュース番組としてはネタ枯れもしておりませんが、岩手では苦戦を強いられております。またサッカーは視聴率が好調です。以上です。
増子委員長
ありがとうございました。番組編成について質問ございますか。
それでは「人間ビジョンスペシャル 心の中の国境」の番組合評に参りましょう。松本さん、お願いします。
松本委員
主人公のスタルヒンについて知識を持っていなかったので、とても数奇な運命を辿ったことや、彼の名前がついた球場まであることは初めて知りました。漢字の背番号も面白いと思ったし、自分にとって初めてづくしで驚いたり感激したりでした。幼少の頃の写真などはよく残っていたなと思いますし、それと再現映像の組み合わせが分かり易く組み立てられていて、理解し易かったです。
導入部は随分長いと思いました。長いことの善し悪しの判断は出来かねますが。
また、スタルヒンの生い立ちや業績、そして事故で亡くなったという流れが一区切りしたあとで、彼の娘さんが出てき更にロシア紀行という流れでした。ロシア紀行から先が余分とまでは言いませんが、視聴者からすれば、一旦、スタルヒンの生涯が終わり、気持ちが途切れた後のことなので、入り込むのにしばし時間を要しました。ロシア紀行の部分は別の取り上げ方もあったと思います。もう一歩踏み込んで取り上げれば、付け足しで見ているような気分にはならなかったと思います。もう一工夫欲しかった点が残念です。それから、ロシアを訪ねた女性の紹介がなかったので誰かなと思いながら見ました。
番組の最後には難民のこともコメントされましたが、そこまで触れるにはちょっと無理があるような気もしました。盛り込みたいことは沢山あるでしょうが、どこに線引きするか、工夫の余地があると思いました。
全体としては勉強になりましたし楽しい番組でした。以上です。
笠川委員
古い貴重なフィルムや写真が数多く使われて、細かい点までよく調べていて、とても良い出来の番組だと思います。事故死については軽く流していたので、単なる事故なのか、そうではないのかという点に疑問を持ちました。
ナビゲーターの徳光さんとゲストの佐々木選手は、いずれも良い人選だったと思います。
私も松本さんと同じで、スタルヒンのことは全く知らないし、野球の知識もあまり無いので、逆に新鮮な気持ちで見ました。どの時代にも政治的な物事に翻弄される運命を辿る人がいるものだと思いました。番組の最後に彼の娘さんが登場したのは、現在との繋がりを持たせる意味でも良かったと思います。ロシアで親族と思われる方を探したり、野球を志す青年がスタルヒンを僕たちのヒーローと語っていたことに、逆に救われるような思いがしました。
番組全体を通してみますと、構成が良く面白かったと思います。
また番組の最後に制作に関わった人たちの名前などが流れますが、映像との兼ね合いで見づらかったのが残念ですね。せっかくですから見やすくしたら良かったと思います。
大坊委員
私の年代は、スタルヒンは野球界の偉人として見ておりましたので、感情移入して見ました。子どもの頃からひたむきなスタルヒンの生き方、数奇な彼の一生を掲げた番組でした。彼の生地まで赴いて話しを聞いたり、古い資料から歴史を辿ったり、よくそこまで取材して番組を作ったなと感心しながら見ました。夢と希望ここで生きる、若者たちにも勇気を与えてくれる、そんな番組でした。
小川口委員
徳光アナウンサーと佐々木選手という人選は良かったと思います。
スタルヒンは旭川出身の野球選手だということは知っていましたが、元々はどこから来たのかという知識はありませんでした。
プロ野球の郷愁に浸りながら番組を見ました。スタルヒンの動く映像は初めて見たので非常に良かったです。ナレーションも良かったですし、スタルヒンについて詳しく教えて貰えて良かったです。本当に感動しました。番組を録画しましたので、私のライブラリに加えようと思います。
今年はプロ野球発足70年ですので、非常に的を射た番組だと思います。30代の息子と一緒に番組を見ましたが、スタルヒンを知らない世代でも一緒に最後まで番組を楽しむことが出来ました。
松本さんがおっしゃるように、私もやや引っ張りすぎの部分があるなと感じましたし、ロシアを紹介している女性は誰なのか疑問を持ちました。スタルヒンだけで番組を組み立てても良かったと思います。
石井委員
スタルヒンは名前を知っている程度なのですが、こんなに凄い選手がいたのかと改めて認識しました。彼の過酷な生涯はぜひ映画にして欲しい位です。革命で異国の地に来て、優等生であり、父親が殺人を犯し、日本で最初のプロ野球チームに入り、最後は事故死するという、ドラマティックで小説としか思えない程の人物が実在したという、信じられないほどの内容です。番組の内容に関しては感動したということに尽きると思います。
プロ野球が出来て70年ということですが、今、歴史の証人が亡くなりつつあるギリギリの時だと思いますので、今の時点で、日本のプロ野球の草創期から現代に至るまでの歴史をまとめた番組を制作して欲しいです。
今回の番組はアメリカやロシアの取材をした大変にスケールの大きな番組でしたが、テーマが多すぎて、何を訴えたいのか霞んでしまった点が残念でした。この番組はあくまでもスタルヒンの伝記として評価したら良いのかな、そんな気もしながら見ました。
宮野委員
スタルヒンの知識があまり無いので、70代の父親と一緒に見ました。
私と父親では番組を見て受けた感覚は全く別のものでしたが、番組全体の流れとしては、スタルヒンの生涯とそれをとりまく環境が分かり易くて良かったと私は思いました。シベリアの美しい風景と相まって、スタルヒンの人物像が分かり易くてとても良い番組だと思います。父親は普段あまり民放を好んで見ることは少ないのですが、非常に懐かしいと言って見ておりました。
私の友人は、スタルヒンにお金をカンパして学校に行かせたという話、人間的なものがまだ日本に残っていることに感動したそうです。私はスタルヒンの生命力に感動しました。ですから、同じ番組を見ても人によって受ける感覚は全く違うものだなということを感じました。
人物を取り上げる番組は、現代人が忘れ去ったものを呼び起こすきっかけになると思いますので、今後もこういった番組を作って欲しいと思いました。
高橋委員
私も、高く評価できる番組だと思います。
プロ野球発足70周年という年に、スタルヒンを取り上げた番組を制作したことは、単に大活躍した選手ということだけではなく、沢山のドラマ性が盛り込まれた人生だったので、取り上げるに値する人物であったということだと思います。結果として素晴らしい選択眼だと思います。
ただ気になった点もあります。戦前を真っ暗闇の不幸な時代とする歴史観が流れている点で、時中彼は軟禁状態であったという下りと、難民問題を取り上げた所です。人々が助け合って明るく生きていた時代でもあるというコメントも欲しかったです。
それから、現代の世の中には2千万人もの難民がいて、その人たちにも目を向けて行かなくてはならないという一方的な言い回しをしておりましたが、むしろそれは番組の中に盛り込むべき内容、本で言えば行間に盛り込むべきであって、番組を見ながら感じさせることであって、コメントとして押しつける必要はないという気がします。
村田委員
ビクトル=スタルヒンの本を読んでおりましたし、ある程度の予備知識はありました。どういった番組作りをするのか興味がありまして、録画もして何度か番組を見ましたが、私の思い込みがあったせいかも知れませんが、見終わってから不満が残りました。
貴重な写真や新聞、映像の組み合わせはとても良かったと思います。ただし、北海道テレビが制作したこともあって、スタルヒンの人柄や人の良さを見せるために悪い所を隠したような作りになってしまった気がします。北海道民にとってスタルヒンは英雄的な感覚がありますし、凄く日本人的な感覚で接していたと思います。ですから突っ込むべき点を伏せた、そんな感じを受けました。たとえば、スタルヒンは列車に轢かれて亡くなったとされているけれども、事実は今も謎です。そこをどう表現するのかとても興味があったのですが、殆ど触れることがなかった点に不満が残りました。それから彼の結婚生活について何も触れていない、それから娘のナターシャさんについても詳しいことには触れていない。ロシアやアメリカの取材に感銘は受けましたが、もう少し、スタルヒンの日本での生きざまに触れて欲しかったです。
彼は日本に帰化したがっていたのに認めて貰えなかったという話は、本でもかなり読みました。そういった日本政府の対応は、今でも引きずっているのだなぁということを、番組の最後の難民の話で強く感じました。それを言うために最後に難民について触れたかは解りませんが、僕はそう判断をしました。
僕にとってスタルヒンはとても好きな人物ですし、番組構成も非常に良かったです。一編の推理小説を読むような心地よさがありました。不満と心地よさを比べますと、心地よさが勝っていると思います。
増子委員長
ありがとうございました。私の世代にとっては、スタルヒンは誰もが知っていますし、客観的に距離を置いて見ることの出来ない番組でした。私は彼についての本も読んだことがありませんし、亡命ロシア人の子どもだということぐらいしか知識がありませんでした。90分番組という時間を感じさせない、その意味で素晴らしい番組だったと思います。私は新聞記者時代、デスクに「人間くさい記事を書け」と言われ続けました。人間はどんな人でもドラマを持っていて対象として素晴らしいですから、それがスタルヒンほどの数奇な運命の持ち主であれば一層引き込まれてしまいます。そんな人間くさいものというのは、新聞だけではなくテレビにも言えるのではないかと思います。
そういう意味では、合評とは離れますが2月21日放送のKHB制作の「エスキモーになった日本人」という番組もとても面白くて引き込まれました。人間ドラマは凄いなと思いました。
この番組にあまり意見はしたくないのですが、村田さんの意見に触発されまして、やはりスタルヒンの描き方が薄かった、陰影が感じられなかった。これは作り手の洞察の問題、つまり都合の良いことばかりではなく、多少の苦みを入れることによって人物像がより浮き立つことは常にあるわけで、それが少し足りなかったのではないかと。国外追放すると脅されたというが、その経緯については軽く流していたし。相当のことをしただろうと思いますので、もう少し欲しかったなと思います。アメリカでなぜあれほど強行な試合をしなくてはならなかったのかの説明も欲しかった気がするし。スタルヒンの父親は刺客に刺されたはずじゃなかったか、とロシアを専門にしている友人は言っておるし。90分もあるのだから、そういった細かいディテールをもう少し盛り込めたはずで、その辺りを軽くながされてしまった気がします。
個人的な感情を申しますと、シアトルのホテルでスタルヒンの名が付いたフロアがありましたが、昨秋、私もあのホテルに行って番組に出演したおばさんに案内されて同じものを見たんです。ですから客観的に番組を見ることが出来なかったんです。ということで、大変に結構な番組でした。
辻事務局長
ありがとうございました。先生方から頂戴しましたご意見は制作局のHTBにも伝えさせて頂きます。
増子委員長
それでは次回開催日についてお願いします。
辻事務局長
次回は3月25日(木)です。
合評番組は3月20日放送の「一関一高春のセンバツ出場特番(仮題)」をお願い致します。
増子委員長
それでは本日の審議会を終了いたします。ありがとうございました。
7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置
特になし
8.審議機関の答申または意見の概要の公表
3/1付 朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。
系列各局に議事録を送付。
本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。
インターネットホームページに掲載。
9.その他の参考事項
特になし
10.配布資料
◎ 3月度単発番組編成予定表